ネット上にある情報の真偽
【あらまし】 「西和彦」を巡るWikipediaでの編集論争などが半年以上も続いている模様。そこでの争点に若干言及。Wikipediaに求められる正確さはどの程度なのか、など。また一見するとかなり信頼できそうな情報にも間違いが含まれている例としてYoung氏に関するネタを取りあげてみる。ネットの上っ面だけを見て判断していると間違いは発見しにくいが、ネット外の情報やネット内でも専門的情報にアクセスできれば簡単に検証できる点などについて述べてみた。
【キーワード】 [Wikipedia][Young]
■Wikipediaに求められる正確さ
何かと重宝しているWikipediaですが、何やらDISられている模様。
ちなみに今現在Wikipediaでの「西和彦」という項目はこんな様子↓です。
ノートというところを見ると経緯に関してなんとなくはわかるのですが、なんだかワケワカラン感じでもあります。もともとあった記述内容が間違いであるとして、西和彦氏御本人が記事を全削除したりしたのが発端らしいのですけれども。
まあ、自分について書かれている記事内容が間違いだらけで修正しようにも手がつけられない状況だった...のなら西氏の行動もわからなくはないのですが、どうもそのあたり微妙くさいんですよね。ノートというところには西氏による間違いの指摘を引用しているのですけど、抜粋するとこんな感じ↓なんですよ。
>学校法人須磨学園を創設した西田のぶの孫に生まれ、[1]両親も須磨学園で教鞭を取った。正確ではありません
>1978年に大学の図書館で BASIC を知り、
この表現は間違いです
>将来性を感じた西はマイクロソフトに国際電話を入れ、たまたま電話に出たビル・ゲイツに
電話には出なかったです
出たのはマリアム・ルーボウでした>自社をマイクロソフトの代理店とするよう要求[2]。
これもちがう
>半年後、カリフォルニア州で開かれた全米コンピュータ会議の会場で西とゲイツは面会。意気投合し、西はマイクロソフト製品の極東地域における独占販売を認められ、マイクロソフトの社員(後には副社長)として迎えられることとなった。
あまりに簡単な書き方です どこかの丸写し 間違いもあり
>1978年10月にマイクロソフトの極東代理店としてアスキーマイクロソフトが設立された。やがて日本のパソコンに BASIC が組み込まれるようになり、1979年にはマイクロソフト極東担当副社長に就任、最盛期にはマイクロソフトの利益の40%近くを極東市場で占めた[3]。
間違い多すぎです
>1981年に当時の京セラ社長稲盛和夫にハンドヘルドコンピュータの開発を持ちかけ、ゲイツと機械を共同設計。
これも違います
>1983年にアメリカでラジオシャックから TRS-80 Model 100 という名前で発売され、日本では NEC から PC-8200 として、ヨーロッパではオリベッティ M-10 として販売された[4]。
一部違っています
>同年、マイクロソフトとアスキーが共同開発した MSX を発表。しかし、同年登場したファミリーコンピュータに支持を奪われ、人気は次第に下降していった。
なぜ、ゲーム機とパソコンを比べるのでしょうか
おかしいと思いませんか
「違う」としか言ってないのでどこがどう違うのか(正確に書くとどうなるのか)が、第三者である私などにはよくわからないものが多いです。もちろん西氏の主観では全て確実に「間違い」なので御立腹なんでしょうけれども。
たとえば年月日や固有名などの記述が間違っているとか因果関係の把握(時系列の前後)が間違っているとか、そうした類いの誰しもが納得するタイプの「間違い」ともちょっと違うことを指摘なさっているものが多いですよね。
なかでも「正確ではありません」とか「この表現は間違いです」「あまりに簡単な書き方です」というような指摘が行なわれた箇所などは(Wikipediaの記事であるため短く簡潔に書かなければいけないという)必然的制約に対するものと考えられますが、こうした「不正確さ」はある程度やむを得ないものなのではないかと私は思います。
年月日、固有名、時系列等々といったものを除くと「間違い」や「不正確さ」を誰しもが納得する程度に避けるというのは難しいのではないかと。
これはなんでしょうね、「30秒でわかる『母をたずねて三千里』」↓的な問題といいますか。
http://www.youtube.com/watch?v=GGd-ivJyPWo
名作アニメ「母をたずねて三千里」(全52話)を30秒にまとめたものなんですけど、これは「間違い」なんですかね、っつーことですよ。「正確ではありません」「あまりに簡単です」といってもいいかもしんないけど、いわなくても良いのではないか、というか。
求められる正確さの水準などは「どういう情報を求められているか」で決まってくるんじゃないのかなあ、と思うわけです。雑でも短くても多くの事項を網羅していることが兎に角重要、というケースというかニーズは結構あるんじゃないかな。特にネット上の情報には。
上で引用した西氏の指摘の直前にはWikipediaの内容について次のように書かれています。
だれがどう書いたのか判りませんが、WEBなどのCUT/COPY/PASTEだけで書かれた本文は酷すぎます
cut&pasteのみで書かれていてもWikipediaに関しては特に問題とは私は思いません。というかそういうところがむしろ便利な点でもあるし。
ウソかホントかは知らないけれど、とりあえずアレコレ情報が集積していて、でも2chのスレとは違って重複がない...というだけですごく助かります。
なんていうのかな、ある種のシソーラスみたいな使い方をしているのですよ。短くても(突拍子もないレベルではなく)間違っていても、検索した単語についての記述があるってことは、それに関連する単語が多数そこには存在するわけですから、そこからまた色々検索することも出来るわけです。あと大体の内容空間というか意味空間みたいなものを把握できるというかアタリがつけられるというか。
■Young違い
で、この流れでこのネタを出すのもどうかとは思ったのですけど。サラシモノにしたいわけではないのでリンクはしませんが、キャプ画像だけ載せておきますと、まあ、こういうサイトというかページ↓があるわけですよ。
これもまた色々網羅的に情報が集積されていて大変重宝するわけですけど、ココに出ているYoung先生に関してはチト問題があります。この部分↓。
Young, F. W. (Univ. of North Carolina) エッカート=ヤング分解,ヤング=ハウスホルダー変換.ViSta.
ええと、上記のF. W. Young先生のサイトはこちら↓です。
そんでですね、エッカート=ヤング分解に関する論文はコレ↓です。
Eckart, Y. and Young, G.: 1936, The Approximation of One Matrix by Another of Lower Rank, Psychometrika 1(3), 211-218. (→参照)
ヤング=ハウスホルダー変換のはコレ↓。
Householder, A. S. and Young, G.: 1938, Matrix Approximation and Latent Roots, The American Mathematical Monthly 45(3), 165-171. (→参照)
それともコッチ↓かな?
Young, G. and Householder, A. S.: 1938, Discussion of a Set of Points in Terms of Their Mutual Distances, Psychometrika 3(1), 19-22. (→参照)
ま、論文の内容はともかく(←!)誰が見てもわかることですがF. W. Young先生とG. Young先生ではそもそも名前が違いますわな。G. Young先生のGはGale。それと大学もシカゴ大です。ま、大学は移ることもあるからアレですが。
っつーかですね、論文は1936年とか1938年に書かれているわけですが、F. W. Young先生のお誕生日は上記サイトで調べるとコレ↓なわけで。
Born: April 10th, 1940
う ま れ て ま せ ん !
どう見ても別人です(笑)。親族かもしれない可能性は否定できませんが。あと最後に出ているViStaというのを開発したのは間違いなくF. W. Young先生みたいですけどね。
えーと、で、こんなことを書くと「一応こういう間違いに気づいたんだったら先方に教えてあげれば良いじゃないか!この変態!」と怒る方もいるかもしれませんけど、私はこれはこれでこのままがいいのじゃないか、と思ったりしてます。
"Eckart-Young" decomposition だとかをちゃんと自分の研究で使うようなヒトなら誰でも気づくことだろうからこうしたYoung間違いがネット上の情報としてあっても問題とはならないだろうし、っていうか、ずーっと気づかないで間違って論文書いてしまうヒトなんかがいたらそっちの方が寧ろ問題なわけですよ。
それとF. W. Young 先生とG. Young 先生は別人ではあるけど、彼らが関係する研究領域は無関係なわけじゃないんですよね。というか思いっきり被ってます。
だからエッカート=ヤング分解について調べていてF. W. Young先生のサイトに辿り着いても別に無駄になるわけでもない。寧ろ「エッカート=ヤング分解」という単語に直接では無いにせよ積極的に関連づけた方が良い人名であるとはいえる。ま、別人なのでヤングという名前が入ったものだけを並記しているのは変ではあるけれど。
・・・と、いうわけでネットの情報は基本的に疑ってかかるものである、という心構えが広く共有されてさえいれば、或る程度不正確でも全然問題ないんじゃないのかなー、正確さより量の方が重視されんじゃないのかなー、といういかにもフツーの結論で締めておきます。
そんな感じで。
業務連絡:上記引用の3論文をスラスラ読めて理解できる方!もしいらしたらボクと(全く打算のない:笑)親友になってください!ホンキです!!




