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領土問題を牽制するためにロシア正教会をつくるといってるけど...

【あらまし】 ロシアの愛国団体が北方領土返還問題牽制のために彼の地にロシア正教会だの礼拝堂だのを作っているらしい。だが一体どういう理屈でそんなことをしているのかはよくわからない。ロシア正教会なら日本本土にも普通にたくさん存在しているわけだし、そのことをもって日本がロシア領であるという主張をするものはいないだろう。この問題について考察してみる。また、関連してロシア正教及び教会施設が社会に対して果たす役割や、映画「イノセンス」で扱われた択捉島などに関する事項についても言及する。
【キーワード】 [ロシア正教][イノセンス][攻殻機動隊][北方領土]

5/31日付けの北海道新聞朝刊にこんなニュースが載っていました。


【ユジノサハリンスク30日山野辺享】ロシア極東の愛国青年団体が六月初旬に北方領土の国後島にロシア正教の小礼拝堂を建てる計画を進めていることが三十日、分かった。北方領土を自国領土と主張し、日本の領土返還運動をけん制するのが狙い。(中略)同団体のアナトーリ・スカレージ代表(二六)は「領土問題で日本への妥協は考えられない」と話している。北方領土では昨年秋、水晶島にサハリンの宗教団体が小礼拝堂を建設している。

ええと、団体の名前は「ナージャ・ストラナ(われらの国)」だそうです。

うーん、「?」というのが最初の感想ですなあ。別にロシア正教会なら札幌とかにもあるけど、だからといって札幌をロシア領だとはいわねーでしょーが。いくらロシア人でもさ。

というか日本中あちこちにあるんだけど。東京にもたくさんあるし。それが国後島にも出来たとして、だから何?って感じなんですけど。

っつーか、一体どういうロジックで国後島にロシア正教の礼拝堂をつくること=日本からの領土返還要求への牽制、ってことになるんだろう?よくわからんです。

一応公式には日本のロシア正教会は「日本正教会」って名乗っているみたい(つまりロシア正教会とは言ってない)ではありますけど。公式サイトはこちら。ロシア正教の下部組織ではあるけど自治独立を認められているという立場のようです。

ま、それにしても意味ないなあ。無人島にそういう施設(灯台とか色々)を作って何か牽制するってのはアリかもしれんけど。国後島につくっても意味なしだよ。国後島にはもともと人が住んでるしね。水晶島の方は微妙に意図がわからなくはないけど。あ、でもそっちはロシア正教ではないのかもしれんな。宗教団体としか書いてないし。

それにしてもなんだかなあ。

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うーんとオイラのウチにもこんなの↑はあります(笑)。別にオルソドクスの信者じゃないけど。ロシア愛国団体の人々にはこういう日本の状況、宗教に寛容な状況っていうのは想像できないんですかね。まあ、無理なんだろうな。誰か教えてやれば良いのに。キミたちがやっていることは滑稽だよ、って。

というか記者の方(山野辺享さん)はそういうツッコミはしなかったのかな。フツーにロシア正教会なら日本中にあるんだけど?国後島に作ったから何?みたいに。

ま、いいけどね。

っつーかですね、キリスト教の三大派閥(っていって良いのか?)であるカソリック、プロテスタント、オルソドクスの中では私はオルソドクスを一番贔屓したい気持ちなんですけどね。クドいけど信者じゃないですよ(笑)。

理由はですなあ...えーと、私は宗教団体が社会的に持つ価値というか意味というか役割というのは記憶装置としてのものだと思っています。記憶というか記録。記憶の記録といっても良いかもしれないけど。

キリスト教に限らず、仏教の寺院なんかについてもそうですね。古文書を集積していたり、あるいは信者の(仏教だったら檀家の)記録なんかを保管してますよね、そういう施設は。共同体の歴史を記録する装置として機能しているわけですよ。墓の管理なんていうのもそういう側面から積極的に評価できるようにも思えます。

で、この観点に立つとですね、できるだけ「古い」団体であって記録を「正確に」残すもの、に対してより良い評価を与えることになります。起源が「古い」ということは新しいものよりも多くの、そして時間的に遠くの記録を持っていることになります。なので評価できる。でもそれだけではダメで、その記録を後世のある時点での勝手な都合で改変したり捏造したりしない、つまり「正確に」残そうとしているかどうか、ということも大事になるわけです。

このあたり微妙に難しい問題を含みますけどね。

そういうわけでキリスト教三大派閥ではプロテスタントは新しいからダメで、カソリックは勝手に改変するのでダメ。消去法でオルソドクスということになりますが、まあ、あんまりこのあたりの話に深入りすると怖いのでこのあたりで(汗)。

ちなみにカソリックが勝手に記録を改変した例はWikipediaにも載っているコレなんかが有名ですね。「フィリオクェ問題」ってやつ。


ニカイア・コンスタンティノポリス信条の原文では、「聖霊は父なる神から発する」としていた。ローマ・カトリック側がそのラテン語訳に9世紀になって一方的に「子からも(発する)(Filioque フィリオクェ)」と付け加え、これを正文であると主張したためにコンスタンティノポリス教会側が反発した。(中略)「フィリオクエ」をめぐってはその後も東西教会で見解が一致せず、結局1054年の大分裂を生んだ。現在でも東方正教会では「聖霊は父からのみ発出し、子を通して派遣される」としている。

どうなんですかね。カソリックが「子からも」って付け加えたのはイエスの神格化というかそういう関係でもあるんですかね。知らんですけど。

そんでここまでの話と関係があるような無いような、映画版攻殻機動隊の2作目「イノセンス」に言及しておきますね。記憶装置としての都市である択捉島(択捉経済特区)というネタなんですけど。

えーと、こんなシーン↓があります。

060603_04

で、こんな会話↓をするわけですよ。


バトー「個体がつくりあげたものもまたその個体同様に遺伝子の表現形だって言葉思い出すな」
トグサ「それってビーバーのダムや蜘蛛の巣の話だろう?」
バトー「珊瑚虫のつくりだす珊瑚礁と言って欲しいなあ。ま、それほど美しくはないが。生命の本質が遺伝子を介して伝播する情報だとするなら、社会や文化もまた膨大な記憶システムに他ならないし、都市は巨大な外部記憶装置ってわけだ」

ええと、コレはオカシイ。結局トグサはこのあと旧約聖書かなんかの一節を引用したりするわけですが、別に「はぁ?」とかいうツッコミはしません。そのまま「ふーん」って感じで流していくんですけど、コレはオカシイ。三回書いておきますかね、コレはオカシイ。

択捉経済特区がどういう場所なのかバトーは知っていることになってます。で、それを空から眺めながら上に引用したような会話をしているのですが、この択捉特区には全く当てはまらない話なんですよね。

たとえばこういう場所↓があります。

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なんという様式と言えば良いのか。ゴシックでしょうか。尖った塔が林立しているので。まあ、でも欧風建築ですよね。都市の入り口というか表に近い顔はこういう建物なわけです。

ところが中に入って行くとこういうパレード↓が練り歩いている。

060603_02

中華街風というか。でも象なんかもいてちょっとそれとも違うような感じですよね。無国籍系東南アジア華僑(華南風?)みたいな風味というか。

しかもこれは上空→表層→中層→下層というように都市の中に入り込んで行く中で見えてくる様に描かれているので、この都市がそういう層と文化の関係の中で構築されているように受け取れます。

更に最下層に潜るとこんどはこういう場所↓が出てきます。

060603_03

崩れ落ちた中華風寺院の廃墟です。

で、これが普通の都市に関しての描写であればそんなに問題はないのですな。更に「都市は記憶の外部装置」云々も、まあそれはそれで正しい。別にオカシクないわけです。具体的に言えば未来の上海とかってこんな感じになってるかもしれないし(もうすでにそうだという話もありますが:汗)。

問題はこれが択捉島だってことですよ。一応「イノセンス」の舞台は現在のリアルな歴史の先(2030年くらい?)にあることになっているわけですからこの都市が形成されたのは30年にも満たない期間じゃなきゃおかしいわけですね。

しかもここが経済特区になって情報都市として期待されたけど、管轄が曖昧なところを利用されて(情報系)犯罪者の巣窟になって荒れた...ってことになっているわけです。

ということはこの都市の最も古い記憶は(日本人が住んでいた時代の痕跡を一掃して)ロシア人が占拠していた時代のもののはずですが、それは描かれません。それを覆い隠すように情報系企業がビルを林立させた状態の痕跡がもっとも古いとなるわけですね。それでも高々30年にも満たない古さということになりますけど。とにかくそれより前のものは存在しないはずです。なのにまるでずっと昔の痕跡のような中華風寺院の古びた廃墟なんかがある。

これは都市の記憶が狂っているってことじゃないの?っと言いたい。寧ろ記憶しそこなった、あるいは捏造された記憶に浸食されているってことじゃないの?と言いたい。

メチャクチャ好意的に解釈すれば、それがこのシーンのあとの(押井守監督は大好きなんだろうけど見ているこっちはウンザリの)夢から覚めても夢で一体どこまでが夢なのかしらん...ネタに繋がるのかもしれませんけどね。

でもフツーにわかってないんじゃないかという疑いも消せないわけですよ。都市がそこで生活する人間たちの外部記憶装置として機能するためには、その記憶がそこで形成されたものじゃないとダメですよね。つまりその場所と関係のない場所で形成された様式を何の脈略もなく移植することを繰り返した場合、その場所には記憶が積み上げられないわけです。地層のように積み上げられるはずのものがメチャクチャになるわけですよ。

っつーか、長々書いちゃったんですけど、要するに「イノセンス」に出てくる択捉経済特区は「ポストモダン都市」であってそれ以前の「都市」とは違うんじゃねーの?ってことです。珊瑚虫が珊瑚礁をつくるのとは全然違う。違った種類の珊瑚虫がつくった珊瑚礁(あるいはその模造品)がモザイク状に移植されていて、その都市の古さも新しさもよくわからなくなっている、記憶の混乱した都市だっつーことですよ。

あ!で、最初の話題に戻りますけど、もしかしたらロシア愛国団体の狙いもそこにあるのかもしれないですね。

国後島は戦前日本人が住んでいたし信者はいなかった(←ここは推測)のでロシア正教会はなかったと。今の島民は戦後になってから移民してきた人達なわけですけど、ロシア愛国団体としては「ずーっと昔からロシア人が住んでたニ...のだ!その証拠にロシア正教の礼拝堂だってあるし!」みたいなことを10年くらいしたら言い出そうという深謀遠慮なのかもしれませんなあ(苦笑)。それなら確かに牽制にはなってるね!

そんな感じで。

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