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小池一夫の謎が判明しねえンだよ!

うーん、わからん。「たけくまメモ」の「小池一夫の謎、判明!」なんですが、かえって謎が深まったかも(笑)。私だけでなく小池一夫公式を見てもさっぱりわからんとは皆さん思うみたいではありますが。

なんつーか「『ん』をなぜカタカナにするのか」という問いに


「弁慶がなぎなたをもって」(注1)にならないため。

と答えてるんですけど、コレは禅問答ですか?大体「なぎなた読み」の説明自体が変な上にどうやったらコレと「ン」が関係するのか全然わからん。

注1:「弁慶が、なぎなたを持って、刺し殺したとさ」を 「弁慶がな、なぎなたを持ってさ、し殺したとさ」と読んだ人がいることから、 このように句読点の位置を変えて読む読み方を「なぎなた読み」という。

読点の位置が変わるだけなら「弁慶がな、ぎなたを持って」だろうに。「ぎなた」って何?となるけど。「弁慶がな、なぎなたを持って」って。「な」が増えているんだけど。バカなの?

それに引用部分の後にある「寝台車」と「死んだ医者」の例は「なぎなた読み」と直接関係ないしな。句読点がどう作用してるっていうんだよ。バカなの?

それとも・・・ひょっとしてギャグでいっているのか?(AA略)

ま、「ネタにマジレスカコワルイ」ってことなんでしょうけど。でも結構イラっとはくるなあ(笑)。大阪芸大・・・あ、でもこの芸風(?)が許されるのはやっぱり大阪だけな気がするし適材適所かも。

それはともかくとして、ちょっと前向きにこの問題を考察してみますかね。「たけくまメモ」では


「ン」に関しては使用する意図がよくわからず、小池一夫最大の謎とも呼ばれていたわけです。

と説明してくださってます。確かに多くのヒトたちが「意図がよくわからず」となっていたモノだけに相当なアポリアですよ、これは。

ええと、作品での用例を見ながらアレコレ書こうかと思ったのですが、我が家には小池&池上マンガが全然ないことに気づきました。なんつーか、こういうタイプのモノを許容する度量が決定的に欠けてるんですよね、私の性格には。いかんなあ。

でもしつこく探したら二冊だけありました。「アイウエオボーイ」の「日本編」と「アメリカ編」。


装弾 小池一雄
発射 池上遼一

って表紙に書いてある。ううう、このノリについていくのは辛いよう。しかも「一夫」が「一雄」になっててまた謎が増えてるし。

とにかく「ン」の謎に絞って先に進むとしよう。考察のポイントは「ン」と表記する場合と「ん」と表記する場合で何が違うか、ってところでしょうね。それを実際の用例について見て行けば何か法則性があるかもしれない。抜き出す範囲は「ン」か「ん」を含むフキダシ内の一行ってことで。「日本編」のpp.3-59までの50箇所では以下のような感じ。


A(1)ひろみクン!
A(2)かんじで
B(3)なるンだ!
C(4)企画なンだからさ
C(5)それもヤングアイドル
B(6)ねえンだよ
C(7)G万はりこんだ
A(8)ジンと伝わって
A(9)ひろみクン
A(10)エレクチオン
D(11)エレクチオン
C(12)テントに
B(13)イヤなんだぜ
C(14)出したンだぞッ
C(15)ずいぶんと
C(16)きたンだぜ!
C(17)やんねえぞ!
A(18)やってごらん
A(19)おねえさんが
D(20)そンな
C(21)かンなあ!
C(22)未来ちゃん!
E(23)さン!
A(24)ゴンちゃんも
E(25)ないンスから
E(26)来るンスか
A(27)ゴン
A(29)行くんでしょ
F(30)ヤングメイトの依頼で
F(31)タレントの一日という
F(32)カメラマンだ!
F(33)タレントを
F(34)キング!
F(35)みんな忘れることだ
F(36)あんただけだ!
F(37)ファックシーンの写真が
F(38)あんたが忘れれば
F(39)忘れるんだぞ
F(40)フィアンセの
G(41)横井さんの問題をはじめ
G(42)小野田さんのことなど
G(43)ジャングルでふられ
H(44)実になんというか
H(45)あるんでねえ
H(46)あるんだ!
H(47)九七戦に乗っていたんだが
H(48)なんかじゃあ
H(49)ないんだ!
H(50)なるんだ!

A=広瀬未来(若い女、カメラマン)
B=男(若中年、アイドルのマネージャー)
C=男(若中年、雑誌編集者)
D=野口ひろみ(若い男、アイドル)
E=ゴンちゃん(若い男、撮影アシスタント)
F=時田(若中年、殺し屋)
G=男(中年、番組司会者)
H=小倉武夫(老中年、政治家)

ということですが、さて。外来語では普通に「ン」が使われてますね。(2)「かんじ」とか(15)「ずいぶん」のようにもともと語中・語尾で使われているものについては「ん」を使う傾向もあるようです。あと「クン」だけ「ン」をつかってますけど「さん」とか「ちゃん」は「ん」を使うような。

ざっと眺めたところ使い分けで色々ありそうなのが「のだ」が撥音便化した「んだ」のようです。これについては後述するとして、ここは一旦上に指摘した部分を全部除いて他に何が残るか見てみましょう。


C(7)G万はりこんだ
(「はりこむ」連用形撥音便+助動詞「た」連濁)
C(17)やんねえぞ!
(「やる」未然形撥音便?+助動詞「ない」?)
D(20)そンな(連体詞?)
C(21)かンなあ!(助詞「から」撥音便?)
H(44)実になんというか(「なに」の撥音便)
H(48)なんかじゃあ(助詞「なんか」)

6例だけですね。うーん、一応文法的に「正しい」範囲のものは「ん」でアヤシイものは「ン」となっている傾向も見られなくはない。でも文法とかはあんまり関係なくて、単に話し手の属性と関係しているんじゃないか、という気もします。いずれにせよ厳密じゃなさそうですけど。

男アイドルDだと「そんな」が(20)「そンな」になって、それより社会性もあって大人な編集者Cだと「やンねえぞ」じゃなくて(17)「やんねえぞ」になる。その一方で「からなあ!」の部分が(21)「かンなあ!」になったりする。あ、でも「かンなあ」はこれ脳内発話なんですよ。意図的に分けてるのかなあこうしたあたり。何か人物造形の点で工夫している部分なのだろうか。

で、「のだ」系なんですけどこんな感じ。順番はちょっと変えてあります。21例中「ン」が7例。


A(29)行くんでしょ
B(3)なるンだ!
B(6)ねえンだよ
B(13)イヤなんだぜ
C(4)企画なンだからさ
C(14)出したンだぞッ
C(16)きたンだぜ!
E(25)ないンスから
E(26)来るンスか
F(39)忘れるんだぞ
H(45)あるんでねえ
H(46)あるんだ!
H(47)九七戦に乗っていたんだが
H(49)ないんだ!
H(50)なるんだ!

発話者別の「ン」の使用数は以下のようになります。

A 0(1)/B 2(3)/C 3(3)/E 2(2)/F 0(1)/H 0(5)

括弧内は総数です。ちなみにひとつ上の6例を加えると

A 0(1)/B 2(3)/C 4(6)/D 1(1)/E 2(2)/F 0(1)/H 0(7)

となります。簡単に傾向を考察してみますか。

BとCは年齢やキャラクターが似ているので「ン」と「ん」の比率も似ている。大人で男で業界人。

AとEはカメラマンと助手の関係で両者には上下関係がある。またEは顔もぞんざい(←タッチがちょっと違う)な軽薄キャラ。これらの点と「ン」の使用は関係がありそう。

Hの政治家は発話は多いにもかかわらず「ン」の使用が全くない。重厚キャラ(←極悪人)ということとテレビ番組で語っている部分であること(←公共性?)も影響しているかもしれない。

やっぱりキャラクター属性をセリフから表現しようという試みである、と考えるのが妥当ですかね。もっと徹底的に用例を集めて「小池一夫の『ン/ん』コーパス」でも作れば謎は解けるかもしれないなあ、誰かやらないかなあ・・・私はイヤだけど。

そンな感じで!(←猛烈に飽きたな!)

追記:現在でも「アイウエオボーイ」はI・餓男(アイウエオボーイ) (1)ホーム社漫画文庫という版で入手は容易なようです。私が今回参照したのは劇画KING SERIES 5「I・餓男ボーイ 日本編<ア>」(STUDIO SHIP、1973)です。ちなみに「アメリカ編<イ>」となっていて、なんとなくオカシイのですけど。この後がどうなっているのか知らないのですが「イタリア編<ウ>」とか「ウクライナ編<エ>」とか「エチオピア編<オ>」などと微妙にズレていたりはしないのですかね。どうなんだろう。

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